文系大学院生の読書録

詩・ミステリ・たまーに洋書

乗ってみたい?「タイタニック」デイヴィッド・スラヴィット

 

"Titanic" by David Slavitt

 

その運命を知っていたら、誰だって乗船しようとは思わないタイタニック号。

 

けれど詩人は「誰がタイタニックを嫌いになれるだろう?」「明日同じ航路のチケットが売り出されたら、誰が買わずに入られるだろう?」と話す。

 

なぜ?

 

詩人は歴史を無視しているわけじゃない。「一人きりで」「みんな沈んでいく」とわかっている。けれど周りに目を向ければ、そこには「友人たち」や「召使いたち」がいて、みんなご馳走で「お腹いっぱい」。「音楽」と「光」が溢れている。船が沈んでも「冷たい水は麻酔」、すぐに何も感じなくなる。「叫び声だって慰め」。だから「そんなに悪いことじゃない」。

 

 

世界中の人々がショックを受けて、「適切に」嘆いてみせ、「本や映画」で悲劇は語り継がれる。けれどそれも結局、人々が「気持ちの良い涙を流せるように」。

 

詩人は、タイタニックに憧れがあるのか、それとも、豪華な船とともに沈んだファーストクラスの人々を皮肉っているのか。半々くらいかな、と思う。彼らの贅ではなくて、彼らの経験に憧れているような感じ。きらめくような光と、深く沈む海の闇を両方経験した人たち。私が今まで経験したことのないもの。自ら経験しようとは思えないもの。だからなかなか経験できないもの。

 

「みんなで行くのさ。ほんのわずかの、ファーストクラス」

 

チケットを買わずにいられるだろうか。命がけの光と闇。垣間見てみたいと、思い始めた自分が怖い。

 

"Titanic" by David R. Slavitt(1935-)

from Good Poems.   Garrison Keillor ed. (p.407)  

Good Poems

Good Poems