文系大学院生の読書録

詩・ミステリ・たまーに洋書

娘の目にはパパの笑顔。 Richard Jones "After Work"

 

Richard Jonesの"After Work"。

 

これはニューヨークの大都会で働くお父さんの詩。

  

地下鉄の駅から、夕暮れのマンハッタンへと出る。「スーパーの女たち」も「タクシー運転手」も何か大声でわめいていて、まるで「心臓を乱暴に掴まれた」みたい。

 

「一日中働いて、苛々して、疲れ切っている」父親を、癒してくれるのは、「通りに響き渡る」「教会の鐘の音楽」ではなくて。

 

家に帰った父親は、「小さな娘を抱きしめ」「キスをし」て呼びかける。そして「娘の目から髪をよけてやる」。娘に自分が見えるように。

 

ギスギスした街とは対照的な、ありきたりだけど平和な、父と娘のやりとり。全体が英語で書かれた中で、娘に呼びかけた「私の命、私の心」というスペイン語の一言は、二人の居場所を、外界から隔絶された聖域のようにしている。

 

父親は娘の顔が見たくて髪をよけるのだろうけど、大事なのは「彼女に見える」こと。そして娘が見るのはきっと父親の笑顔なんだろう。「どんなに仕事が大変でも娘に会えば疲れが吹き飛ぶ」なんてよくわからなかったけれど、今少しだけ、その気持ちがわかった気がする。自分の父親もこんな風に感じたんだろうか。恥ずかしすぎて聞けないけれど。

 

"After Work" by Richard Jones(1953-)

Good Poems(Garrison Keillor編)p.183所収。

Good Poems

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