文系大学院生の読書録

詩・ミステリ・たまーに洋書

グルメなんて知るか!フツーなレタスへの深い愛 Gerald Locklin "The Iceberg Theory"

Gerald Locklin "The Iceberg Theory"

 

 少し前、批評家が大絶賛している映画を見に行ったら、全然楽しめなくて苦行状態になりました。そして、あ〜私って見る目がないんだなぁ、と考えてちょっとだけへこみました。ちょっとだけ。

 そんな私に自信を取り戻してくれたのがこの詩です。"The Iceberg Theory"ってなんだか小難しそうなタイトルだな、と思って読み始めたら、笑ったあとにほっこりできる詩でした。アイスバーグって、レタスの種類なんですね。この詩大好きです。(以下、かっこ内は作品要約です。)

 

(グルメはみんなアイスバーグ・レタスを毛嫌いしている。ロメインレタスは麗しいオルフェウスの冠から来たと思ってるし、ホウレンソウは栄養素全部詰まってると思ってるし(ポパイのおかげ!)、赤キャベツにだってよだれを垂らす。それもこれも全部かわいそうなアイスバーグ・レタスをけなすため。)

 

I guess the problem is

it's just too common for them.

it doesn't matter that it tastes good,

has a satisfying crunchy texture,

holds its freshness,

and has crevices for the dressing,

whereas the darker, leafier varieties

are often bitter, gritty, and flat.

it just isn't different enough, and 

it's too goddamn american.

問題は

アイスバーグ・レタスが、あまりに普通なことだと思う。

おいしいとか

シャキシャキ感がいいとか

新鮮さ長持ちとか

くぼみにドレッシングが絡むとかは、彼らはどうでもいいんだ。

色の濃い、葉っぱの多い品種は

だいたい苦くて、ざらざらで、まっ平らなのに。

ただ、十分に違わない、というだけ

どうしようもないくらいアメリカンなだけで。

 

(もちろん批評家は批評しなきゃならない。たぶん、文学批評家が現代詩を面白がるふりをするのも、そういうことだろう。私には退屈なだけだが。何はともあれ、私はアイスバーグ・レタスたっぷりのサラダが大好きだ。そして私が好きな詩は、好きなふりをしなくてもいい詩なんだ。)

 

 文学批評家に対する皮肉がメインテーマだと思うのですが、それ以上に、グルメが見向きもしないフツーのレタスを、これでもかと褒め称え擁護するこの詩が大好きです。目新しさがなくて、あまりにも「アメリカン」なせいで、このレタスが持っているおいしさとか食感が全部無視されてしまう。かわいそう。

 そしてそれは詩でも同じ。批評家は奇抜すぎて意味がわからない現代詩を面白いと言う。でもそれ面白いふりをしてるだけでしょ、という詩人の問いかけが意地悪すぎて清々しい。詩だけじゃなくて小説でも映画でも絵画でも、批評家の言ってることって、なんかかっこつけたいだけなんじゃない?って言いたくなるときがある。それは自分がその作品を全然面白いと思えないときで、そのせいで自分の趣味が間違っている気がしてしまうときなのですが。「本当にあなた、それ、いいと思ってる?」と考えてたのが自分だけじゃないとわかってなんだか嬉しい。これからは、"the poems I enjoy are those I don't have / to pretend that I'm enjoying"というラスト2行を胸に秘めて、誰がなんと言おうと好きなものを好きだと叫んで生きていきます。

 

 ええ、私は『ムーンライト』よりも『ラ・ラ・ランド』の方がはるかに好きです。EliotよりもPoundよりも、LongfellowとFrostが大好きです。

 

 

 

Gerald Locklin(1941-)アメリカ、ニューヨーク州生まれ。

"The Iceberg Theory" Good Poems(Garrison Keillor編)pp.272-273所収。

 

Good Poems

Good Poems