文系大学院生の読書録

詩・ミステリ・たまーに洋書

Good Poemsという詩集

Garrisn Keillor編 Good Poems

 

 何冊かある手持ちのアンソロジーの中で、普段いちばん気軽に開いているのが、Garrison Keillorが編集したGood Poemsという詩集。The Writer's Almanacというラジオ番組で紹介された数千の詩の中から約290篇が収められています。

 

Good Poems

Good Poems

 

 

 およそ160人の詩人による作品が収められていますが、アメリカの詩人が大多数で、たまにイギリスなどが入ります。印象としては20世紀後半の作品が多め。文学史でおなじみの詩人もいれば、(もちろんアメリカでは有名なのだと思いますが)名前を聞いたことのない詩人もいて新鮮でした。ほとんどが1〜2ページに収まる分量で、とても読みやすいです。

 中は19のセクションに分かれています。"O Lord"のような宗教的なセクションもあれば、"Day's Work"といった日常風景、"Sons and Daughters"のような家族についてのセクション、"Good Life" "The End"といった人生についてのセクションもあります。すべて生活に関係するのかと思いきや、"Yellow"とか"Beast"というセクションが突然現れるのも好きです。セクション分けがあるおかげで、ある程度内容が推測できるのもありがたい。その日の気分で作品にあたりをつけることができます。(自分の恋愛がうまくいかない時に"Lovers"セクションの詩を読んでも舌打ちしか出てこない。)

 

 皮肉屋の友人が「いい詩ねぇ、誰がいいって決めたんだ?こいつか」と冷たい目で表紙を眺めていましたが、編者の答えは明快。読んだ人・聞いた人の「記憶に残ること」が「いい詩のサインの一つ」だそうです。忘れられることが書き手にとって最大の恐怖だと言い、詩人W. S. Merwinの以下の言葉を引いています。

 

"If a poem is not forgotten as soon as the circumstances of its origin, it begins at once to evolve an existence of its own, in minds and lives, and then even in words, that its singular maker could never have imagined"

(もしも、書かれた途端に忘れられたりしなければ、その詩は作者が思いもよらなかった形で、心や人生、そして言葉の中ですぐに存在し始めるのだ。)

 

  詩は小説と違って詳細に説明があるわけではなく、よく意味がわからないことも多い。けれどその空白を、自分の想像力で埋めたり、自分の境遇に引き寄せたりできるのが面白いところだと思います。そして、それができる詩だから私は覚えているし、詩は忘却から逃れられる。 

 また編者は"a conspiracy of friendliness"(友好の密かな共有)が、この詩集の裏サブタイトルだと言い、詩人Keneth Rexrothの以下の言葉を引用します。

 

"The mature man lives quietly, does good privately, assumes personal reponsibility for his actions, treats others with friendliness and courtesy, finds mischief boring and keeps out of it. Without this hidden conspiracy of good will, society would not endure an hour."

 (成熟した人間は、静かに生活し、善行は密かに積み、自分の行動に責任を取り、友好と礼儀で他人と接し、悪さにはうんざりして距離を置く。このような意思が暗黙のうちに共有されていなければ、社会は1時間と保たないのです。)

 

この詩集を読んでいると、ああ、こういうことあるある、と頷いてしまう瞬間がよくあります。そういうとき、誰かと友好を密かに共有しているのかもしれません。手元に置いて、日々楽しむ本として大好きな1冊です。

 

 

 ついでに。同じ編者にGood Poems, American Placesという詩集もあります。こちらはアメリカの様々な場所にちなんだ詩が集められていて旅行気分。お気に入りです。

 

Good Poems, American Places

Good Poems, American Places