文系大学院生の読書録

詩・ミステリ・たまーに洋書

優しくてちょっと厳しい詩 Mary Oliverの"Wild Geese"  

 Mary Oliverの"Wild Geese"。こちらのウェブサイトで原文が見れます。 (http://www.phys.unm.edu/~tw/fas/yits/archive/oliver_wildgeese.html)もともと友人に教えてもらったのですが、読み手に寄り添ってくれるような優しい詩です。疲れた心に染み入ります。以下、かっこ内は要約です。

 

(いい人でいなくていい。後悔しながら歩き続けることなんてない。やりたいようにやればいい。あなたの絶望を聞かせて。私のことも話すから。その間に世界はまわる。太陽と雨つぶが、草原や深い森、山々や川を越えていく。そして野生の雁たちは、青く透き通った空高く、家へと帰っていく。)

 

Whoever you are, no matter how lonely,

the world offers itself to your imagination,

calls to you like the wild geese, harsh and exciting--

over and over announcing your place

in the family of things.

あなたが誰だろうと、どれほど孤独だろうと

世界はあなたの想像力次第

野生の雁のように、激しく、刺激的に、あなたに呼びかけているー

何度も、何度も、あなたの居場所は

ここにあるのだと。

 

 

 ・・・しみる。

 この作品を読んでいるとただしみじみとしてしまうのですが、一つ気になることがありました。読者に静かに寄り添う姿勢と、その中で語られるwild geeseの持つ野生の激しさのギャップです。

 wild geeseの鳴き声を最近初めて聞いたのですが、詩を読んで想像していたよりも、はるかに激しく鋭くて、正直少しぎょっとしました。私にとっては、ノスタルジーなどよりも危機感とか恐怖感を抱かせるような声です。

  そう考えると、世界が「あなた」に呼びかける声も、決して優しく包み込むような声ではない。「激しく」て「刺激的」な、それこそ読み手の「体のやわらかな獣」の生存本能を刺激してくるような声に思えてきます。

 ここまで考えて宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』に関するWikipediaの記述を思い出しました。この映画には「危機に直面することで、少女が生きる力を取り戻す姿を描く」意図があったというもので、この詩にも少し似たものを感じます。wild geeseの声は、野生の世界の生々しい厳しさとそこで生き延びようとする本能に満ちている。私はその声を聞くと、うじうじ言っている暇はない、とにかく生きなければならない、そんな気がしてくるんです。

  世界の大きさに比べればちっぽけな悩みでも、それが私たちには絶望に値するものだと語り手はわかっている。だからwild geeseの鳴き声で私たちの生きる力を呼び起そうとする。人生に迷って身動きが取れなくなることの多い大学院生にはありがたい共感+叱咤激励です。

 

 ところで、最終行の"in the family of things"をどう訳していいやらわかりません。どなたか、案があれば教えてください。ではでは。

 

詩人・作品情報

Mary Oliver (1935-) アメリカ、オハイオ州生まれ。

Good Poems  (Garrison Keillor編)所収 p.222

 

Good Poems

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